レガシーシステムの重大な5つの問題点と放置するリスクを解説
デジタルトランスフォーメーション(以降、DX と表記)推進において、レガシーシステムのリプレイス(刷新)は重要なポイントです。
一方で、レガシーシステムを使い続けていても現状の業務が回っていることから、リプレイスの優先度が下がりやすい傾向にあります。
しかし、弊社は数多くの現場で、レガシーシステムの放置が引き起こした深刻な事態を目の当たりにしてきました。だからこそ、その危険性に警鐘を鳴らしています。
本記事では、レガシーシステムの対応に着手する1つの判断材料になり、結果として最悪な事態を避けるきっかけにすべく、レガシーシステムの具体的な問題点と放置する重大リスクについて解説します。
レガシーシステムの問題点
レガシーなシステムには主に以下のような 5 つの問題があります。
- ブラックボックス化により、改善・対応が困難
- 最新のセキュリティ対策ができず、脆弱な状態
- システムの性能・機能が限界となり、業務に支障
- ベンダーロックインにより、改善の PDCA が停滞
- システム担当者の属人化で、運用・管理が不安定
上記の問題を順に掘り下げて解説します。
ブラックボックス化し、改善・対応できない
1 つ目の問題は、レガシーシステムがブラックボックス化し、システムの改善・対応できないことです。具体例として、以下のような問題が挙げられます。
- 過去のシステム担当者が不在で、誰もシステムを解読できず、放置せざるをえない状態
- 一部改善しようとすると、他機能が動かなくなり、八方塞がり
- 予期せぬシステムエラーが発生時、原因究明ができず、根本的な解決策が不明
- …
ブラックボックス化したレガシーシステムは全体像を把握することが難しく、結果的に改善や対応が困難な状況に陥り、以下のような深刻な悪影響を引き起こします。
- 非効率な状態が固定化し、組織全体の生産性が低下
- レガシーシステムの制約により、業務変化の対応が困難
- システムエラー発生時、長時間の業務停止リスクが増大
最新のセキュリティ対策ができず、脆弱な状態
2 つ目の問題は、現代に不可欠なセキュリティ対策が実施できないことです。具体例として、以下のような問題が挙げられます。
- システムのバージョンを更新すると停止するため、古いバージョンのまま使用せざるを得ない状態
- 多要素認証など、現代に必要不可欠なセキュリティ機能が実装できない
- 古い技術を使用しているため、最新のセキュリティパッチが適用できない
- ...
上記のように、レガシーシステムでは現代のセキュリティ基準を満たしたくとも対策を講じることができず、セキュリティリスクに対し、無防備なままになりがちです。
その結果、以下のような深刻な悪影響を引き起こす恐れがあります。
- 既知の脆弱性を抱えたまま運用せざるを得ず、サイバー攻撃のリスクが増大
- 情報セキュリティの法令やガイドラインを満たせず、コンプライアンス違反のリスクが発生
- セキュリティ事故発生時、取引先や顧客からの信頼を大きく損なう可能性が増大
システムの性能・機能が限界となり、業務に支障
3 つ目の問題は、システムの性能・機能が限界を迎え、業務遂行の妨げとなっていることです。具体例として、以下のような問題が挙げられます。
- データ量の増加で処理待ちが長くなり、日常業務の遂行に支障
- システムが特定の PC でしか動作せず、場所を選ばない働き方ができない
- 必要なデータを取り出せず、データ分析や利活用が進まない
- ...
レガシーシステムの運用初期であれば問題なくとも、ビジネスは変化し続けます。しかし、レガシーシステムはその変化に追従できず、むしろ業務の足枷となり、負債化が進行。
その結果、効率化を目的としたシステムが、いつしか非効率の元凶となり、以下のような悪影響を引き起こしています。
- 処理の遅延や制限により、業務効率が著しく低下
- 場所や端末の制約により、働き方改革の推進が停滞
- データ活用の制限により、データドリブン経営への移行が困難
ベンダーロックインにより、改善の PDCA が停滞
4 つ目の問題は、ベンダーへの依存度が高く、必要な改善の PDCA を円滑に回しにくい状況にあることです。具体例として、以下のような問題が挙げられます。
- ベンダーがシステムの主導権を握っているため、柔軟かつ迅速なアップデートが難しい
- 改修の度に高額な費用が発生するため、必要な改善も先送りになりやすい
- 特定ベンダーしか改修できないため、見積もりの妥当性を判断できない
- ...
上記のように、レガシーシステムが特定ベンダーに縛られてしまい、業務やシステムの改善サイクルを適切に回せない状態が恒常化。その結果、以下のような悪影響を引き起こします。
- 必要な改善を先送りにせざるを得ず、業務効率化の機会を逃し続ける
- 高額な保守・運用費用を払い続けながら、システムの価値が目減りする一方
- 新たな取り組みへの対応が遅れ、DXの推進が停滞
システム担当者の属人化で、運用・管理が不安定
5 つ目の問題は、システムの運用・管理が特定の担当者に依存していることです。具体例として、以下のような問題が挙げられます。
- システムを理解しているのが特定の担当者のみで、負荷が著しく集中
- 属人的な運用手順が多く、他メンバーへの引継ぎが困難
- 担当者不在時のシステム障害に対応できない状態
- ...
上記のように、レガシーシステムの運用・管理が特定の担当者の経験やスキルに強く依存している状態が恒常化。その結果、以下のような悪影響を引き起こします。
- 急な人事異動や退職により、システム運用が停止するリスク
- 属人的な運用により、障害対応の遅延や混乱が発生
- 担当者の負荷集中により、業務改善や新規施策が停滞
レガシーシステムにおける問題点の整理・分類
ここまで挙げてきましたレガシーシステムの問題は、「技術的問題」と「組織的問題」という 2 つの側面で以下のように整理・分類が可能です。
技術的問題 | 組織的問題 |
---|---|
システムのブラックボックス化 | ベンダーロックイン |
性能・機能の限界 | システム担当者の属人化 |
セキュリティリスク |
レガシーシステムが引き起こす重大リスク
これまで挙げてきたレガシーシステムの問題を放置すると、事業継続の危機に直結する最悪のシナリオを引き起こす恐れがあります。具体的には以下 3 つのリスクです。
- システム障害発生時の事業停止リスク
- セキュリティインシデント発生時の重大リスク
- システム担当者喪失時の事業継続リスク
それぞれ解説します。
システム障害発生時の事業停止リスク
突如としてレガシーシステムが機能を停止した場合、業務が完全にストップする恐れがあります。
さらに深刻なのは、ブラックボックス化やシステム担当者が不在の問題を抱えている場合、原因究明から復旧までに膨大な時間を要することです。この長期化が、甚大な事業損失を引き起こします。
セキュリティインシデント発生時の重大リスク
レガシーシステムの脆弱性を突かれ、システムが完全に停止する恐れがあります。現代のセキュリティ対策が実装されていない場合、データの改ざんや情報漏洩といった二次被害の発生もありえるでしょう。
最悪の場合、システムの復旧・復元が困難となり、事業の信用失墜と経営危機を招きかねません。
システム担当者不在時の事業継続リスク
急な人事異動や退職など、システムに精通している担当者が不在になった瞬間、システム障害への対応が実質的に不可能であり、持続的な事業運営の観点から脆弱といえるでしょう。
このような状況下では、日々の運用で発生する小さなトラブルですら対応できなくなる恐れがあり、最悪の場合、重大な障害が起きれば事業継続の危機に発展しかねません。
おわりに
本記事では、レガシーシステムが抱える問題点と、その放置がもたらす重大リスクについて解説してきました。レガシーシステムの問題は、一朝一夕には発生せず、長年の運用の中で徐々に深刻化します。
レガシーシステムのリプレイスには、時間とコストがかかる上に、耐えながらの現状維持もしやすいため、対応が後回しにしやすい傾向にあります。
しかし、放置し続け、最悪なケースに直面した際は「時すでに遅し」となり、取り返しのつかない事態を招きかねません。
本記事が、レガシーシステム対策の必要性を認識し、対策を検討するきっかけとなれば幸いです。
この記事を書いた人
2016 年に旭化成株式会社に入社し、原料管理のシステムエンジニアとして従事。2019 年に株式会社キカガクに入社し、新規事業のソフトウェアエンジニア兼 C 向けコンテンツマーケティング責任者を担当。2024 年に、株式会社ファンムーブを設立。上場企業からスタートアップまで幅広く DX を支援している。