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Excel 管理・運用から脱却するための8ステップ

2024.11.19
#脱 Excel
入田 隆のアイコン
代表取締役 CEO入田 隆

限界に直面した Excel 管理・運用から脱却したいものの、以下のようなお悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

  • どこから手を付ければよいのか
  • どのように進めていけばよいのか

本記事では、Excel 脱却の成功を導くための 8 つのステップを解説します。

【前提】マインドセット「小さく始めて、どんどん改善」を持つこと

まず、Excel からの脱却を進める前に、核となるマインドセット「小さく始めて、どんどん改善」を持つことが重要です。理由は以下になります。

  • 早期の成功体験で確実な前進
    • 成功体験による組織全体の自信獲得
    • 社内の協力が得られやすい環境の形成
  • 最短での目標達成
    • 実践を通じたナレッジ・ノウハウの蓄積
    • 効果検証の質とスピードの向上
  • 初期のリスクと投資の抑制
    • 段階的な投資によるムダの排除
    • 影響範囲を限定した安全な推進

このような背景から、脱 Excel プロジェクトの成功を導くために、マインドセット「小さく始めて、どんどん改善」に紐づくアクションで進めることが大切です。

【全体像】脱 Excel の 8 ステップ

マインドセット「小さく始めて、どんどん改善」に基づく脱 Excel の進め方は以下の通りです。

フェーズ 実施内容
企画フェーズ 1. Excel 管理・運用の棚卸し
2. 脱 Excel 化する業務の選定
計画フェーズ 3. 現状の業務フロー可視化
4. 理想の業務フロー設計
5. 脱 Excel 化における手段選定
6. ロードマップ策定
実行・改善フェーズ 7. 脱 Excel の実施
8. 改善の繰り返し

上記の各フェーズにおける位置づけは、以下の通りです。

フェーズ 説明
企画フェーズ 現状を正しく把握し、適切な着手領域を選定するフェーズ
計画フェーズ 具体的な実現方法を設計し、実行計画を立案するフェーズ
実行・改善フェーズ 計画に基づき実行し、継続的な改善を進めるフェーズ

各ステップについて順に掘り下げて解説します。

脱 Excel の企画フェーズ

まずは、どの業務から脱 Excel 化を始めるか決めていきましょう。

企画フェーズにおける具体的なステップは以下の通りです。

  1. Excel 管理・運用の棚卸し
  2. 脱 Excel 化する業務の選定

順番に解説します。

1. Excel 管理・運用の棚卸し

脱 Excel 化の対象業務を見極めためには、まず自社の Excel 管理・運用の全体像を把握する必要があります。

以下 3 つの観点から棚卸しを進めていきましょう。

観点 確認項目
Excel 管理・運用中の業務の棚卸し ・Excel 使用業務
・関連部署
・関係者数
・連携範囲
工数・頻度の棚卸し ・実施頻度
・作業時間
・突発的な作業の発生頻度
課題の棚卸し ・効率面の課題
・運用面の課題
・データ管理の課題

棚卸しの段階では、質より量が重要です。まずは完璧を求めず、できるだけ多くの Excel 管理・運用中の業務を洗い出すことを優先しましょう。

この棚卸しの目的は、現状を俯瞰して着手領域を検討するための起点を作ることです。完璧な現状把握を目指しすぎると、棚卸しという手段が目的化し、次のステップに進めなくなってしまいます

2. 脱 Excel 化する業務の選定

次に、棚卸しで把握した内容を基に、脱Excel化する業務を選定します。選定は以下 2 つの観点から総合的に判断しましょう。

観点 評価項目
改善効果 ・作業工数の削減
・モレ・ミス・ロス削減による品質向上
・データ利活用による意思決定の質向上
脱 Excel の 実現のしやすさ ・Excel ファイル / シートの数
・業務フローのシンプルさ
・関係部署の数
・関係者数

選定のポイントは「改善効果が高く、実現がしやすい」業務を見つけることです。例えば、以下のような業務が候補になります。

  • 単一部署で完結するが、毎日大きな工数が発生
  • 業務フローはシンプルだが、ミスのリスクが高い
  • 関係者は少ないが、データの正確性が重要

計画フェーズ

続いて、企画フェーズで選定した脱 Excel 化する業務において、具体的な実現方法を計画します。計画フェーズの具体的なステップは以下の通りです。

  1. 現状の業務フロー可視化
  2. 理想の業務フロー設計
  3. 脱 Excel 化における手段の選定
  4. ロードマップ策定

各ステップについて解説します。

3. 現状の業務フロー可視化

まず、選定した業務の現状を詳細に把握するため、業務フローを可視化します。理由は以下の通りです。

  • 業務の全体像を図示することで、関係者間で認識を合わせやすくなるため
  • 作業の流れを整理することで、非効率な部分が見つけやすくなるため
  • 現状を可視化することで、より良い業務の仕組みを考える土台ができるため

業務フローの可視化は、単なる現状の記録ではありません後工程で実施する「理想の業務フロー設計」「改善手段の選定」の質を大きく左右する重要なステップです。

現場の担当者や関係者との対話を通じて、詳細に作成しましょう。

4. 理想の業務フロー設計

次に、現状の業務フローをベースに、Excel に縛られない理想的な業務のフローを設計します。理由は以下の通りです。

  • 目指すべきゴールが明確になり、関係者間で方向性を合わせやすくなるため
  • 現状の課題に対する解決策を具体的に描けるようになるため
  • 改善の優先順位や移行ステップが見えやすくなるため

脱 Excel によって、課題が解決された理想的な業務フローを、現状の業務フロー図のように描いてみましょう。

5. 脱 Excel 化における手段の選定

続いて、脱 Excel 化の手段を選定しましょう。脱Excel化の手段は大きく 3 つあります。

手法 説明 特徴
パッケージ 目的に特化した
既製品のソフトウェア
※ 会計、営業支援など
◎ 素早い導入が可能
▲ 痒いところに手が届かない
ノーコード・ローコード
ツール
様々な業務アプリを
簡単に開発できるツール
◎ 柔軟性とスピードを両立
▲ 一部、高度な処理に対応できない
フルスクラッチ開発 プログラマーがゼロから開発 ◎ オーダーメイドで業務適合率が高い
▲ 時間と費用がかかる

このような手段を比較検討する際は、以下のポイントを確認しましょう。

観点 検討項目
機能面 ・必要な機能の網羅性
・自社でカスタマイズできる範囲
・他システムとの連携のしやすさ
・データ利活用に必要な機能
・他業務への横展開の可能性
運用面 ・導入/運用時の学習コスト
・使いやすさ
・トラブル時のサポート体制
コスト面 ・初期コスト
・保守運用コスト
・カスタマイズコスト

6. ロードマップ策定

計画フェーズの最後には、選定した改善手段をもとに「小さく始めて、どんどん改善」のマインドセットを意識し、以下のように段階的な計画を立てましょう。

  1. 最終ゴールの策定
  2. マイルストーン策定(最終ゴールの細分化)

特に、マイルストーン(中間目標)策定が重要になります。理由は以下の通りです。

  • 大きな目標を段階的に実現できるため
  • 各段階で成功体験を積み重ねられるため
  • 進捗状況を関係者と共有しやすくなるため
営業支援の脱 Excel 化におけるマイルストーンの策定例
  • 最終ゴール
    • 営業データの一元管理と分析の自動化
  • マイルストーン
    • 案件情報の入力・共有をシステム化
    • レポート作成の自動化
    • 予測分析機能の追加

ロードマップ策定のポイントは以下になります。

観点 検討項目
マイルストーン ・最終ゴールの明確化
・中間目標への分割
・各段階の達成基準
優先順位 ・効果の大きさ
・実現の難易度
・現場からの要望度
スケジュール ・マイルストーン達成までの期間

このように、最終ゴールを適切なマイルストーンに分解し、小さな成功を積み重ねることで、挫折を回避しながら、脱 Excel 化を着実に進められます

実行・改善フェーズ

最後に、計画フェーズで策定した方針をもとに、脱 Excel 化を進めます。実行・改善フェーズの具体的なステップは以下の通りです。

  1. 脱 Excel の実施
  2. 改善の繰り返し

順番に解説します。

7. 脱 Excel の実施

計画フェーズで選定した手段をもとに、マイルストーンに沿って脱 Excel 化を進めましょう。

ここでも「小さく始めて、どんどん改善」のマインドセットが重要になります。なぜなら、最初から完璧な進め方が見えていれば良いのですが、多くの場合そうではないからです。

まずは、できるところから着手し、試行錯誤しながら、改善を積み重ねましょう。形にしていく中で、より良い進め方や新たな改善案も見えてきます。

その気づきを活かしながら、一歩ずつ前に進めることで、理想的な脱 Excel 化を実現できます。とりあえず試し、ダメならまた試す心構えで進めましょう

8. 改善の繰り返し

脱 Excel 化が完了したら、後は運用しながら改善を繰り返すのみです。現場に使ってもらい、フィードバックを得ながら、より良い仕組みへと改善しましょう。以下、改善例です。

実際に使ってみることで、新しい課題や改善アイデアが見えることも多いです。このような気づきを 1 つずつ形にしていくことで、現場に寄り添った、より使いやすい仕組みへ進化します

おわりに

本記事では、脱Excel化を成功に導くための 8 つのステップについて解説しました。

フェーズ 実施内容
企画フェーズ 1. Excel 管理・運用の棚卸し
2. 脱 Excel 化する業務の選定
計画フェーズ 3. 現状の業務フロー可視化
4. 理想の業務フロー設計
5. 脱 Excel 化における手段選定
6. ロードマップ策定
実行/改善フェーズ 7. 脱 Excel の実施
8. 改善の繰り返し

「小さく始めて、どんどん改善」というマインドセットを持ち、最初から完璧を目指すのではなく、着実に進めることが Excel 脱却を成功へと導きます。

本記事が、脱Excel化に悩む方々の「最初の一歩」を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

この記事を書いた人

入田 隆
入田 隆代表取締役 CEO

2016 年に旭化成株式会社に入社し、原料管理のシステムエンジニアとして従事。2019 年に株式会社キカガクに入社し、新規事業のソフトウェアエンジニア兼 C 向けコンテンツマーケティング責任者を担当。2024 年に、株式会社ファンムーブを設立。上場企業からスタートアップまで幅広く DX を支援している。

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